最優秀賞にスポーツショップ古内 札幌の 野球専門店がAIと作った仕組みで受注集計の残業をゼロにし、全国大会へ
全国ワークスタイル変革大賞2026 北海道・東北大会 結果発表

全国ワークスタイル変革大賞実行委員会は、2026年10月30日(金)にEZOHUB SAPPORO「HIGUMA HALL」(北海道札幌市)で開催した「全国ワークスタイル変革大賞2026 北海道・東北大会」の審査結果を発表しました。
当日は北海道・東北の4組が、デジタルを活用した働き方の変革について公開プレゼンテーションを行いました。戦略性・浸透度・成果・再現性・デジタル技術の活用・熱意の6つの観点で審査した結果、最優秀賞に株式会社スポーツショップ古内(北海道札幌市)が選ばれました。同社は、2026年12月16日(水)に東京・五反田で開催する全国大会に、北海道・東北エリアの代表として出場します。
受賞結果
最優秀賞
株式会社スポーツショップ古内
発表タイトル:小さな町の野球専門店のDX ─ AIが生んだ、人にしかできない「相談する時間」

優秀賞
株式会社いちたす
発表タイトル:毎日のゆとりが、非常時の強さになる ─ 仙台発・人と事業を守るフェーズフリー経営

奨励賞
しゅふコミ
発表タイトル:地方女性の働き方を変える挑戦

国立大学法人北海道大学
発表タイトル:働きやすさを、挑戦する力へ ─ 「Mind × Digital Transformation」で変える国立大学事務組織

受賞組織の取り組み概要と評価ポイント
株式会社スポーツショップ古内(最優秀賞)
取り組み概要
札幌市南区石山の株式会社スポーツショップ古内は、1978年創業の野球専門店です。小学生のころの作文「僕の夢」に店を継ぐと書いた3代目の代表取締役は、店を継ぐ前にメーカーでグラブの製作と営業を経験し、取り扱う競技を、市場の大きさや参入障壁の高さを見極めて野球に絞り込みました。創業のころから大切にしてきた店頭での接客、手書きのハガキ、修理などのメンテナンスには、どうしても時間がかかります。受注の処理などの裏側の作業に追われ、家族や友人との時間も取れずにいました。そこで、POSレジと会計ソフトの連携、社内チャット、購入者アンケートなどで記録を残す仕組みを整えてきました。生成AIが登場してからは、代表自らAIにプログラムを書いてもらい、主なものだけで20の仕組みを自作しています。何を作るかは人が決め、組み立てはAIに任せ、最後の仕上げは人が行うという分担で、AIに判断はさせず、空いた時間はお客様に返すと先に決めています。
・入荷ツール:メーカーから届く納品データを、AIで作ったアプリに入れるだけで、POSレジ(スマレジ)が読み込める形に自動で変換。新商品100品番の登録は約8時間から5分以内になり、「硬式グラブ」を「公式グラブ」と打つような表記ゆれもなくなった
・受注フォーム:学校ジャージやチームの注文をお客様にフォームで入力してもらい、集計から納品書・請求書・メーカーへの発注書までを自動で作成。受注の集計と書類づくりにかかっていた1日8時間(2時間×4人)の残業はゼロになり、転記ミスもなくなった
・お客様の声の分析:AIを使う前から集めてきた購入者アンケートの自由記述5,553件を、AIが「来店のきっかけ」「迷ったこと」「決め手」「本当の願い」の4つの見方で仕分け。決め手の1位は「はめた感触」で、理由を書いた2,996人のうち990人が「フィット」「しっくり」「手に合う」と書いていた。クチコミの中身は、親から子、孫へと続く人と時間のつながりだった
・生まれた時間で、第2水曜日を定休日にし、毎週水曜日は14時開店に変更。開店までの時間は、全員での読書と感想の共有、全体ミーティング、商品研究に充てている
主な成果
・グラブの販売個数:860個(2022年8月期)→ 1,871個(2026年8月期)。来店客のうちグラブを購入する方は、8.5人に1人から4.5人に1人に
・修理と加工の依頼数:約1,100件(2021年度)→ 約3,500件(2025年度)
・代表が店の外での挑戦に時間を使えるようになり、台湾の展示会では自社ブランドのグラブを84個受注
同社は今後、スタッフが撮影した動画をAIが編集する仕組み(1本の作業を2時間から10分に)の開発や、海外のお客様に向けた販売にも取り組むとしています。
評価ポイント
AIの活用は、データを積み上げて数字を出す使い方が多いなか、お客様の声に着目し、AIを使うことで自社が大切にすべき方針を見いだした点が高く評価されました。数字だけではない部分を経営戦略に生かし、事業の軸を絞り込む判断を裏付けにもとづいて進め、その結果が経営の数字に表れている点も評価されました。小学生のころの作文に書いた夢を実現し、事業を伸ばしている姿は、地域で小さな店を営む事業者にとって大いに参考になると評価されました。
株式会社いちたす(優秀賞)
取り組み概要
宮城県仙台市の株式会社いちたすは、全国の幼稚園・保育園の経営を支援する社員15名の会社です。採用関連の費用が増え、早期離職も経験したことから、人を増やすだけでなく、今いる人が働き続けられる組織への変革に取り組みました。柱は、情報・知識・担当・場所の4つの分散です。相談や判断の経緯はChatworkに残し、業務の手順や引き継ぎは約40本の教材動画で共有して週1回のオンライン勉強会で補い、業務は複数の担当で進め、リモートと出社を選べるようにしました。全職員がフレックスの対象で、事務所から2km以内に住む職員には月3万円の住宅手当を支給し、交通機関が止まったときにオフィスを支える役割を定めています。休みの日の返信は求めないことも決めています。社内アンケートでは、回答した9名全員が働く時間や場所が違っても必要な情報を受け取れると答え、8名が口頭だけの引き継ぎが減ったと答えました。毎日の働きやすさの仕組みがそのまま非常時の備えになるこの考え方を、同社は「フェーズフリー経営」と呼んでいます。さらに、新入社員の「答えがすぐに出ると、自分で考える力が育たないのでは」という声を受け、AIの役割を思考力を育てることへ広げました。AIを相手にした説明の練習と上司の手本動画との比較や、質問をAIと整理してから上司に相談する「質問仕訳表」を取り入れています。
評価ポイント
会話だけで終わり、その後につながらないことが多いなかで、Chatworkでのやり取りを仕事の中心にし、記録を残していく取り組みを具体的に進めた点が評価されました。若手社員の声を受けてAIを教育に使う方向へ踏み切り、AIの活用で多くの企業が突き当たる課題に柔軟に向き合いながら使いこなしている点も、ほかの企業の参考になると評価されました。
しゅふコミ(奨励賞)
取り組み概要
福島県郡山市で活動するしゅふコミは、2018年から妊娠期・子育て期の母親を支える活動を続けてきました。妊婦や産後の母親が集まれるカフェ、冊子「パパとママの子育てバイブル 福島県版」の発行、子育て用品を譲り合うプロジェクトなどです。支援を続けるなかで、子育ての悩みの背景には女性の働き方と家計の問題があると気づき、子育て支援に加えて女性のキャリア支援に取り組んでいます。地域の企業から広告や採用、業務委託の仕事を受け、子育て中の女性ができる形にして振り分けることで、子育て世帯の収入を増やし、地域の中でお金が循環する仕組みをめざしています。SNSやWebサイトでつながり、2022年からはCanvaを使ったデザイン講座、2026年にはChatGPTやNotebookLMなどのAI講座を開いてきました。講座で学んだ女性たちが、小児科や工務店のSNSの運用を担っています。子育てかキャリアかの二択ではなく、ライフステージに合わせて働き方を選べる「第三の選択肢」と、子育て期を経た「40歳からの正社員」というキャリアの形をつくることをめざしています。
評価ポイント
子育て期にキャリアを中断する女性の現実を踏まえ、「40歳からの正社員」を見据えて、子育て中の女性の働き方の選択肢を増やそうとしている点が評価されました。女性の採用に悩む地域の企業と、働き方に制約のある女性との間をつなぐ役割にも期待が寄せられました。
国立大学法人北海道大学(奨励賞)
取り組み概要
北海道大学では、札幌・函館・東京など各地の拠点で、48の事務組織に962名の事務職員が働いています。2022年度の職員アンケートでは「新しい業務に積極的になれない」が47.3%、「働きにくいと感じる」が35.4%にのぼり、前例踏襲や縦割りの業務構造が挑戦を阻んでいました。そこで「事務職員が変われば、北大は変わる」を掲げ、働く環境とマインドの両面から変革を進めています。業務用PCのノート化と無線LANの整備、共通のコミュニケーションツールとしてのTeamsの選定、「会議は原則Web」のガイドライン、資料のクラウド共有により、仕事に合った場所を選んで働けるようにしました。紙の資料をやめる取り組みは、総長をはじめ役員が率先して進めました。Teamsには全職員が参加できるデジタルコミュニティを設け、生成AIや業務自動化など話題別の11のチャネルで、「回答の義務・責任なし」と明記して気軽に質問や共有ができるようにしました。事務以外の教職員を含む約1,100名が参加しています(2026年10月時点)。現場の職員が紹介した会計処理の自動化ツールが財務部門の目にとまり、全学展開に向けたプロジェクトに発展しました。組織マネジメントを学ぶ「MX(マインド・トランスフォーメーション)研修」は累計110名が受講し、満足度は5点満点中4.75、73%が組織への貢献意欲の高まりを実感したと答えています。2026年度からは人事部門との共催になりました。生成AI「Microsoft 365 Copilot」の業務利用の試行には112名が参加し、1か月あたり1,561時間を削減しました(2026年9月測定)。
評価ポイント
変化を受け入れにくいと言われる大学の事務組織で、ガイドラインのような決まりそのものを新しくすることで、職員が抵抗なく新しいやり方に移れるように進めている点が評価され、ほかの大学にも紹介したい事例との声が上がりました。所属を越えたコミュニティや研修を通じて、部署同士のコミュニケーションが変わり始めている点も評価されました。
イベント概要
・名称:全国ワークスタイル変革大賞2026 北海道・東北大会
・開催日時:2026年10月30日(金)13:30〜15:30
・会場:EZOHUB SAPPORO「HIGUMA HALL」(北海道札幌市東区北8条東4丁目1-20 サツドラHD本社2階)
・審査員:木村 琴絵(一般社団法人ノーコード推進協会 理事)、松本 国一(一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会 生産性向上部会 部会長/富士通株式会社 シニアエバンジェリスト)
・主催:全国ワークスタイル変革大賞実行委員会
・全国DX推進パートナー:株式会社kubell、株式会社セールスフォース・ジャパン
・運営協力:株式会社みらいパートナーズ、渡敬情報システム株式会社、加藤税理士事務所、株式会社グッドビジネスパートナーズ、株式会社クレヴァシステムズ
・後援:北海道経済産業局、北海道総合通信局、東北経済産業局、東北総合通信局、北海道、札幌市、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、(一財)全国地域情報化推進協会、(一社)日本中小企業診断士協会連合会、(一社)テレコムサービス協会、(一社)日本コンピュータシステム販売店協会
・公式サイト:https://workstyle-transformation-awards.jp/
主催団体について
全国ワークスタイル変革大賞実行委員会は、一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会が事務局を運営しています。
・名称:一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会(JDX)
・事務局所在地:〒102-0074 東京都千代田区九段南1-5-6 りそな九段ビル5F KSフロア
・代表者:代表理事 森戸 裕一
・発足:2010年6月(法人化:2010年10月)
・事業内容:DX推進人材の育成、自治体DX推進プロジェクト、産業振興・政策提言ほか
・URL:https://jdxa.org
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